■[読書メモ]夜露死苦現代詩
都築響一は統合失調症の詩人、友原康博氏について書いた章でこのように述べている。
友原さんが発病した当時、精神医療はいまよりはるかに未発達だった。効果的な薬剤も開発されておらず、世間から隔絶された精神病院の内部では、治療という名のもとに監禁、拘束、そして電気ショック(いわゆる"電パチ")といった残酷行為が横行していた。
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精神医療の歴史を語るとき、ロボトミー手術と電気ショック療法は残酷で非人間的な、過去の誤った療法であるように思われている。しかし、患者に回復不能なダメージを与えてしまうロボトミーはともかく、電気ショック療法は現在、有効性のある治療法として見直されているのが事実だ。都築氏の記述は過去については正しいかもしれないが、現在の電気ショック療法の再評価の流れには触れていない。
まだ欧米での処方が中心で、日本ではそれほど取り組まれていないそうだが、特に難治性のうつ病に対して電気ショック療法が効果をあげているのだという。しっかり麻酔をして厳重な管理体制の下で施療すれば、安全性もあり、決して非人道的な過去の治療法ではない。
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もちろん、過去において電気ショック療法が患者への懲罰的な目的で濫用され、麻酔無しで事故が起こる事例もあったという暗い事実は、忘れてはならない問題だ。統合失調症の当事者による体験記のさきがけ、松本昭夫の「精神病棟の二十年」の中には、昭和30年代の精神病院での電気ショック療法の様子が描かれている。
畳が敷かれた部屋に連れて行かれた。三、四人の男が寝ている。その中の一人は、口にタオルをくわえて、全身をガタガタと震わせている。その光景は私の眼に異様に映った。
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次の男の番になった。タオルを口にしっかりとくわえさせてから、係員が器具の二つの端子を二、三秒間男の左右のこめかみに当てた。すると、男の身体が、一瞬硬直し、のけぞって失神した。それから全身をガタガタと震わせた。ちぎれそうにタオルをくわえた口から、激しい息使いが聞えた。私の心は氷ったようになった。
これが電気ショック療法だった。しかも、麻酔をすることもなく生のままかけていたのだった。それはまさに処刑場の光景だった。係員は冷酷な刑吏のように見えた。
そのうちに、私の番になった。何か叫びだしたい恐怖を感じたが、今更逃げ出すことも出来ず、どうにでもなれといった捨て鉢な気持になって、床に身を横たえた。
タオルを口一杯にかんだ。瞬間的に電流を走るのを感じたが、その後の意識はない。
まだ今のところ統合失調症の原因は解明されていない。現在主流である薬物療法に使用される薬も、飲んでみたらたまたま効果があったという対症療法的な処方からはじまっているのが現実だ。電気ショック療法と聞いただけで、胡散臭い野蛮な行為のようなイメージを持ってしまうが、その根本的な不分明さという点では、薬物療法も不確かなところに変わりはないのだ。当事者にとっては、医療の水準が向上することを願って、現在の治療を甘んじて受け続ける以外に方法はない。
「夜露死苦現代詩」について苦言を呈するような紹介になってしまったが、この本自体はとても刺激的で興味深い内容に溢れ、大変楽しむことができた。おすすめの一冊である。
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